楽しみ方

はじめて香木を買う人へ — 失敗しない順序

香木を買うときは、順序があります。どのくらいの頻度で焚くかを決める、野生か栽培かを決める、少量で試す、焚き方を決める、記録を取る。この5つを先にやっておくと、買ってから後悔することが減ります。とくに最初の2つを飛ばすと、金額の桁を間違えます。

香木は、順序を間違えると高くつきます

香木は少量でも高価です。1g で百円台のものから、7万円台のものまであります。

そして、買ってから「思っていたのと違った」と分かることがよくあります。香りが好みでなかった、思ったより量が要った、道具が合わなかった。どれも、買う前に決めておけば避けられたことです。

この記事は、その順序を書いたものです。当店で買っていただかなくても構いません。 ただ、順序を間違えると高い買い物が無駄になるので、そこだけは書いておきたいと思います。

図:買うまでの5つの順序 頻度を決める、野生か栽培かを決める、少量で試す、焚き方を決める、記録を取る、の5段階を順に並べた流れ図。

1. どのくらいの頻度で焚くか、先に決める

これを飛ばすと、あとの判断が全部ぶれます。

年に数回しか焚かないのか、月に何度か焚くのか、毎日焚くのか。頻度が決まれば必要な量が決まり、量が決まれば選ぶべき価格帯も絞れます。

一回に使う量の目安は、電子香炉なら 0.05〜0.1g、灰や炭で直接焚くなら 0.1〜0.3g です。ここから逆算できます。

焚く頻度 1年に必要なおよその量
年に数回(来客時など) 1〜2g
月に1〜2回 3〜5g
週に1回 5〜10g
ほぼ毎日 30〜50g

電子香炉での量を基準にした概算です。灰や炭で直接焚くなら、2〜3倍で見てください。

ここで分かるのは、年に数回なら量はほとんど要らないということです。1g で10回以上焚けます。だから、高価な材を少量という選び方が成り立ちます。

逆に日常的に焚くなら、グラム単価が効いてきます。年間50gなら、1g 3,000円の材で15万円、1g 300円の材で1万5千円。同じ趣味とは思えない金額差になります。

2. 野生か、栽培かを決める

ここが金額の桁を決めます。

野生の伽羅と、栽培された沈香・伽羅は、値段が桁で違います。同じ「伽羅」という言葉が使われていても、指しているものが違います。詳しくは次の3本に書きました。

1の頻度と重ねると、選び方が見えてきます。年に数回しか焚かないなら、野生の良品を1gという選択があります。毎日焚きたいなら、栽培品でなければ続きません。

当店が扱っているのは栽培品だけです。 野生の伽羅は扱っていません。野生のものを探している方は、他の店をあたってください。それが正しい買い方だと思います。

栽培品を選ぶ場合、次の記事も参考になります。

3. いきなり量を買わない。少量で試す

写真と文章では判断できません。

香木の説明文は、どの店のものも似た言葉で書かれています。「甘い」「涼やか」「奥行きがある」。読んでも、自分の鼻に合うかどうかは分かりません。

だから最初は少量です。1〜2g。それで10回以上焚けます。

当店だとお試しセットに、二つの等級と三つの形を計12g入れてあります。等級と形の違いを並べて確かめるためのものです。他の店で買う場合も、少量から出しているところを選んでください。いきなり10g、20gと買うのは、その材が自分に合うと分かってからです。

香木は腐りません。保存さえ間違えなければ、慌てて買う理由はありません。

4. 焚き方を決める

道具の話は、ここまで来てからで構いません。

大きく2つあります。電子香炉を使うか、灰や炭の上に直接置くか。当店がおすすめしているのは後者ですが、煙が出るので部屋を選びます。

道具に先に予算を使わないでください。 仏壇用の香炉と灰があれば始められます。道具を一式そろえてから買うと、香木に回せる分が減ります。

電子香炉を買う場合だけ、ひとつ条件があります。温度が数字で表示されるものを選んでください。「弱・中・強」しか出ない機種だと、当店を含め、どの店の書いている温度とも突き合わせられません。

5. 記録を取る

これは買ったあとの話ですが、最初から始めたほうがいいので入れておきます。

焚いた記録を残さないと、次に何を買えばいいかが分かりません。「前に買ったやつのほうが良かった気がする」では、選ぶ手がかりになりません。

書き留めるのは、材の名前、温度、そのとき感じたこと。「良い香り」とだけ書くと、あとから読んでも何も分かりません。 書き方については香りを言葉にするに、香道の五味と産地の言い方を並べて書きました。どちらを使っても、自分の言葉で書いても構いません。

記録があると、3回目、4回目の買い物が変わります。ここがいちばん効いてくるところだと思っています。

買う前に、売り手に確認すること

順序とは別に、どこで買う場合でも確認したほうがいい項目があります。

栽培伽羅の見分け方に7つ挙げましたが、要点は次の4つです。

  • 栽培品なのか野生品なのかを明示しているか
  • 産地が特定できるか
  • 重量が実測値か(乾かす前の値ではないか)
  • どういう加工を経ているか説明できるか

答えが返ってこない場合は、確かめる材料がないまま買うことになります。当店がどうしているかは加工工程に書きました。

沈水と書いてある商品の見方については沈水すれば良い香木なのかを読んでください。沈むことは樹脂の量の指標で、香りの質とは別の軸です。

海外通販を見ている方へ

海外の産地から直接買えば安い。これは事実です。

ただ、沈香はワシントン条約の附属書IIに掲載されていて、書類のそろわない荷物は税関で止まります。返送、留め置き、場合によっては没収。そのときの損失は買った側に乗ります。栽培品でも免除されません。

詳しくは沈香とワシントン条約に書きました。買う前に読んでおいてください。

よくある入り方と、その結果

当店が見てきた範囲での話です。

道具から入る。 香道具の一式を買って、香木は後回しになる。使わない道具が残ります。

一番高いものから入る。 基準がない状態で最高級品を焚いても、何が良いのかが分かりません。安いものと並べて、はじめて差が見えます。

まとめて買う。 単価が下がるのは事実ですが、合わなかったときの損も大きい。少量で試してからでも単価の差は取り返せます。

焼香用の香木を買ってしまう。 用途が違います。焼香に使う香木に、抹香・焼香・沈香の関係を整理しました。

どれも、順序の問題です。

最後に、当店の立場

この記事に商品ページへのリンクをあまり入れていないのは、意図的です。

香木は、買う側が判断できる材料を持っていないと、値札の大小でしか選べなくなります。それは売り手にとっては都合がいいのですが、買った人が続けられません。

順序どおりに進めて、少量で試して、それで当店の香木が合わなければ、よそで買ってください。合うようでしたら、定番のほうにご案内があります。

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よくあるご質問

最初はどのくらいの量を買えばいいですか?

1〜2gで十分です。電子香炉なら1回0.05〜0.1g、直接焚いても1回0.1〜0.3g程度なので、2gあれば10回以上試せます。まとめて買うのは、自分に合う材が分かってからで遅くありません。

野生の伽羅と栽培の伽羅、どちらを買えばいいですか?

価格が桁で違うので、先に決めておく必要があります。年に数回しか焚かないなら野生の伽羅を少量という選び方があり、日常的に焚くなら量が要るので、栽培品のほうが現実的です。当店が扱っているのは栽培品だけで、野生の伽羅は扱っていません。

道具は先に買ったほうがいいですか?

後で構いません。仏壇用の香炉と灰があれば始められます。道具に予算を使うと香木に回せる分が減ります。続けると決めてから増やしてください。

天香屋で買わないといけませんか?

そんなことはありません。この記事は当店の商品を勧めるためではなく、順序を間違えて高い買い物を無駄にする人を減らすために書いています。どこで買う場合でも、買う前に確認する項目は同じです。

海外の通販のほうが安いようですが。

安いのは事実です。ただし沈香はワシントン条約の附属書IIの対象で、書類がそろわない荷物は税関で止まります。返送や没収になった場合の損失は買った側に乗ります。買う前に確認してください。

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