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沈香・伽羅の値段はなぜ違うのか — 野生と栽培、樹脂、流通の三つの理由

香木の価格差は、野生か栽培かという出自、樹脂の沈着量、そして流通経路の長さの三つでほぼ決まります。老舗の公開価格で、野生の伽羅は刻・割で1gあたり26,400〜88,000円、沈香(野生・栽培の表示なし)は刻で32〜3,300円。栽培伽羅は刻・乱切・細刻みで440〜5,500円(角割・乱割を含めると11,000円まで)、栽培沈香は店名非掲載の一店の公開価格で刻135〜300円(特記のあるものを除き2026年8月24日・当店調べ)。野生の伽羅の刻・割と当店の栽培伽羅(100g購入時の1gあたり、通常品298円・沈水選別品598円)では、およそ44倍から295倍の開きがあります。

目次

数字を並べてみる

2026年8月24日に、老舗・大手と店名非掲載の一店の公開ページで確認し、税込にそろえた価格を、1gあたりに直して並べます。

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種別 形 1gあたり(税込) 出典
野生の伽羅 刻・割 26,400〜88,000円 山田松香木店・香源の公開価格
野生の伽羅 末・粉末 16,500〜49,500円 同上
沈香(野生・栽培の表示なし) 刻 32〜3,300円 松栄堂・林龍昇堂・高野山大師堂の公開価格
沈香(野生・栽培の表示なし) 割 528〜5,280円 林龍昇堂の公開価格
沈香(野生・栽培の表示なし) 粉末 33〜66円 高野山大師堂の公開価格(2026年8月28日再確認)
栽培伽羅 刻・乱切・細刻み 440〜5,500円 高野山大師堂の公開価格(在庫品ベース)
栽培伽羅 乱割・角割 6,600〜11,000円 同上
栽培沈香 刻 135〜300円 店名非掲載の一店の公開価格(栽培沈香と明示して売る小規模店・当店調べ)
当店の栽培伽羅・沈水選別品 小片・塊材(100g) 598円 当店
当店の栽培伽羅・通常品 小片・塊材(100g) 298円 当店
当店の栽培伽羅・通常品 小片・塊材(500g) 約270円 当店
当店の栽培伽羅・粉末 粉末(100g) 228円 当店
当店の栽培伽羅・粉末 粉末(500g) 約200円 当店

※高野山大師堂の税別表示は、表中いずれも税込に換算しています。

※表の当店の段は栽培品の価格です。野生の伽羅や沈香(野生・栽培の表示なし)と同じ土俵に並べる数字ではなく、他店の栽培伽羅の段とも、等級・形・量目をそろえて比べたものではありません。1gあたりの数字だけで優劣を比べられるものではなく、当店の価格の比較対照として他店価格を用いているわけでもありません。当店以外の段は、特記のあるものを除き2026年8月24日に当店が見た範囲の公開価格で、市場全体を調べたものではありません。店ごとの商品名・等級・量目まで入れた一覧は、別の記事に置く予定です。

※形の名前は各店の表記です。末・粉末は粉、刻・乱切・細刻みは数ミリから1cm程度に細かく切ったもの、割・乱割・角割は割った塊です(香木の形の記事)。

同じ「沈香」という言葉で呼ばれていても、野生の伽羅の刻・割と当店の栽培伽羅(100g購入時)のあいだには、1gあたりおよそ44倍から295倍の開きがあります。ただし沈香(野生・栽培の表示なし)の下の等級と他店の栽培沈香は、1gあたり数百円の水準で価格帯が重なります。なお市場で「天然沈香」と表記されるものには、野生の材も植栽の材も含まれ得ます(「天然」という言葉の記事)。栽培伽羅でも、上の等級の刻は1gあたり5,000円前後になります。野生か栽培かだけで一本の線が引けるわけではありません。同じ「伽羅」の名前でも、店・等級・形状で3倍以上の幅があります(山田松香木店の伽羅は1gあたり末16,500円、刻26,400円、角割33,000〜55,000円)。

これだけ差が開くと、はじめて買う人は何を基準にすればいいのか分からなくなります。当然だと思います。整理します。

差は三つでできている

1. 野生か、栽培か

これがいちばん大きい要因です。

野生の伽羅は、条件の合った木が偶然の傷を受け、傷や菌の関与など諸説ある結香の過程を経て、何十年も放置されてはじめてできます。狙って作れません。貴重で、使われるにつれて、年々少なくなっています。ワシントン条約(CITES)の規制もかかっています(栽培品も原則として対象です)。

供給が細る一方で需要が減らなければ、価格は上がる。野生の伽羅の1g数万円には、香りの質だけでなく、希少性の対価が大きく含まれています。

栽培品は、供給のされ方が違います。当店の提携農園では、栽培伽羅の苗を定植しておよそ4年、幹が十分に太った頃合いを見てから穴を開け、結香させはじめます。そこからさらに2〜3年、長いものでは4年ほど置き、樹脂の乗り具合を一本ずつ確かめたうえで伐り出す、というのが農園のやり方です。同じ等級の材を、続けてお出しできます。だから桁が変わります。

このあたりの仕組みは結香の記事に書きました。

2. 樹脂がどれだけ乗っているか

同じ栽培品の中でも、樹脂の量で数倍の開きが出ます。

指標として使われるのが沈水——水に入れて沈むかどうかです。木部そのものは水より軽いので、沈むのは樹脂が空隙を埋めているからです。

当店が通常品と沈水選別品を分けているのも、この軸によります。ただし沈水は樹脂の「量」の目安になるだけで、香りの質を保証しません。そこは沈水の記事に詳しく書きました。

3. 何人の手を経たか

見落とされやすいのがここです。

産地 → 現地の集荷業者 → 輸出業者 → 日本の輸入商社 → 問屋 → 小売店。この経路をたどると、それぞれの段階で利益が乗ります。一般的な流通を経た店頭価格には、この積み上げが含まれます。

経路の段数の分だけ、価格に利益が積み上がります。下は当店の場合です。

悪いことではありません。誰かが在庫リスクを取り、選別し、保証しています。その対価です。

ただ、段数を減らせば価格は下がります。

当店の値付けについて

当店の通常品は100gで298円/g、500gで約270円/g、粉末は100gで228円/g、500gで約200円/gです(いずれも税込・送料込)。上の表のとおり、栽培沈香として売られているものにも、沈香(野生・栽培の表示なし)の下の等級や粉末にも、当店より安いものが実在します。そのうえで、老舗の野生の伽羅と比べると桁が違うため、低すぎて不安になると言われることがあります。理由を書いておきます。

  • 海南島の提携農園から直接引いていて、間に問屋が入っていません。
  • 洗浄・切断・剔除・乾燥・選別・熟成を自分たちでやっています。加工賃を外に払っていません。
  • 実店舗を持たず、広告も出していません。

そしてもう一つ、方針の話です。少量を高く売るより、量をお使いになる方に継続してお使いいただくほうがいいと考えて値付けしています。100g・500gと量が増えるほどグラム単価が下がるのは、そのためです。寺院様や、まとまった量をお使いになる方には、kg単位でのご相談も承っています。

安さを売りにするつもりはありません。ただ、値段は、手に取って、惜しまず焚ける範囲に置いておきたいと考えています。

まとめ買い・寺院様へのご案内

値段の理由を聞いてください

最後に、これは当店に対しても言えることとして書きます。

香木は、買う前に品質を確かめにくい商品です。焚いてみるまで分かりません。こういう商品では、価格そのものが品質のシグナルとして働きます。ですから、相場より低い値には、必ず理由の説明が要ります。

省けるものはいくらでもあります。洗わない。選別しない。寝かせない。乾く前に量る。どれをやっても原価は下がります。さらに、栽培品を、野生と受け取られる書き方で売れば、同じ材でも高く売れてしまいます。これは業界で一般に起こりうる話として書いています。この記事の表に挙げた店のことではありません。表の数字は、各店が公開している価格を引いたものです。

値段の理由を説明しない売り手からは、お求めにならないほうがよいと当店は考えています。当店が加工工程を全部公開しているのは、そのためです。

洗って、選り分けて、一年寝かせる — 当店が香木を売るまでにしていること

参考文献

よくあるご質問

安い沈香は偽物ですか?

偽物とは限りません。ただし安い理由は必ずあります。栽培品である、樹脂が少ない、流通が短い、洗浄や選別を省いている、乾燥前に量っている——このどれかです。理由を説明できる売り手から買ってください。

高ければ良い香木ですか?

そうとも限りません。野生の伽羅の価格は希少性に大きく左右されていて、香りの質と完全には対応しません。ただし極端に安いものは、何かが省かれていると考えたほうが安全です。

相場はどこで確認できますか?

老舗の香木店の価格表、ヤフオクなどの落札実績、香木を扱う仏具店の店頭価格を並べて見るのが現実的です。この記事の表は、特記のあるものを除き2026年8月24日に山田松香木店・香源・松栄堂・林龍昇堂・高野山大師堂と、店名非掲載の一店(小規模店)の公開ページで見て、税込にそろえた価格を1gあたりに直したものです。数字を公開している店とそうでない店があります。

天香屋はなぜこの価格で出せるのですか?

提携農園から直接引いていること、洗浄から熟成まで自分たちでやっていること、実店舗を持たず、広告も出していないことの三つです。加えて、少量を高く売るより、量をお使いになる方に継続してお使いいただくことを考えて値付けしています。

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