相場
香木の値段は、なぜこんなに違うのか — 1g百円台から7万円台まで
香木の価格差は、野生か栽培かという出自、樹脂の沈着量、そして流通経路の長さの三つでほぼ決まります。野生の伽羅は1gあたり26,400〜77,000円(2026年8月・当店調べ)、栽培伽羅は数百円から一万円を超えるものまで、栽培沈香の普通品はさらに下に分布しており、同じ「沈香」の名でも桁が二つ違います。
数字を並べてみる
2026年8月時点で、日本国内で買える香木の価格を並べます。すべて1gあたりです。
| 売り手・種別 | グラム単価 |
|---|---|
| 老舗の野生の伽羅(「天然伽羅」として流通) | 26,400〜77,000円 |
| 栽培伽羅(市場の幅) | 数百円〜1万円超 |
| 当店・沈水選別品(100g) | 598円 |
| 当店・通常品(100g) | 298円 |
| 当店・通常品(500g) | 約270円 |
| 当店・粉末(100g) | 228円 |
| 当店・粉末(500g) | 約200円 |
上と下で、約390倍違います。同じ「沈香」という言葉で呼ばれているものの中で、です。
これだけ開くと、初めて買う人は何を基準にすればいいのか分からなくなります。当然だと思います。整理します。
(下五段の当店の価格は栽培品です。最上段の野生ものと同じ土俵に並べる数字ではありません。念のため書いておきます。また当店以外の段は、当店が2026年8月時点で見た範囲の価格であって、市場全体を調べた数字ではありません。)
差は三つでできている
1. 野生か、栽培か
これがいちばん大きい。
野生の伽羅は、適した木が偶然の傷を受け、適した菌に感染し、何十年も放置されて初めてできます。狙って作れません。産地の資源は減り続けていて、ワシントン条約の規制もかかっています。
供給が細るのに需要が減らなければ、価格は上がる。野生の伽羅の1g数万円は、品質の対価というより希少性の対価です。
栽培品は違います。結香させて18か月から数年で採れる。同じ材を繰り返し出せる。だから桁が変わります。
このあたりの仕組みは結香の記事に書きました。
2. 樹脂がどれだけ乗っているか
同じ栽培品の中でも、樹脂の量で数倍の開きが出ます。
指標として使われるのが沈水——水に入れて沈むかどうかです。木部そのものは水より軽いので、沈むのは樹脂が空隙を埋めているからです。
当店が通常品と沈水選別品を分けているのも、この軸です。ただし沈水は樹脂の「量」を測るだけで、香りの質を保証しません。そこは沈水の記事に詳しく書きました。
3. 何人の手を経たか
見落とされやすいのがここです。
産地 → 現地の集荷業者 → 輸出業者 → 日本の輸入商社 → 問屋 → 小売店。この経路をたどると、それぞれの段階で利益が乗ります。老舗の店頭価格には、この積み上げが全部入っています。
悪いことではありません。誰かが在庫リスクを取り、選別し、保証している。その対価です。
ただ、段数を減らせば価格は下がります。
当店の値付けについて
当店の通常品は100gで298円/g、500gなら約270円/g。粉末は100gで228円/g、500gで約200円/gです。低すぎて不安になる、と言われることがあるので、理由を書いておきます。
- 海南島の提携農園から直接引いていて、間に問屋が入っていません。
- 洗浄・選別・乾燥・熟成を自分たちでやっています。加工賃を外に払っていません。
- 実店舗を持たず、広告も出していません。
そしてもう一つ、方針の話です。少量を高く売るより、量を使う方に長く続けていただくほうがいいと考えて値付けしています。100g・500gと量が増えるほどグラム単価が下がるのは、そのためです。寺院や香舗の方にはkg単位のお見積りもしています。
安さの理由を聞いてください
最後に、これは当店に対しても言えることとして書きます。
香木は買う前に品質を確かめられません。焚いてみるまで分からない。こういう商品では、価格そのものが品質のシグナルとして働きます。だから相場より安いものには、必ず理由の説明が要ります。
省けるものはいくらでもあります。洗わない。選別しない。寝かせない。乾く前に量る。どれをやっても原価は下がります。さらに、栽培品を「天然」と言って売れば、同じ材でも高く売れてしまいます。
安い理由を説明できない店からは、買わないほうがいいと思います。当店が加工工程を全部公開しているのは、そのためです。
よくあるご質問
安い沈香は偽物ですか?
偽物とは限りません。ただし安い理由は必ずあります。栽培品である、樹脂が少ない、洗浄や選別を省いている、乾燥前に量っている——このどれかです。理由を説明できる売り手から買ってください。
高ければ良い香木ですか?
そうとも限りません。野生の伽羅の価格は希少性で決まっていて、香りの質と完全には対応しません。ただし極端に安いものは、何かが省かれていると考えたほうが安全です。
相場はどこで確認できますか?
老舗の香木店の価格表、ヤフオクなどの落札実績、香木を扱う仏具店の店頭価格を並べて見るのが現実的です。数字を公開している店とそうでない店があります。
天香屋はなぜこの価格で出せるのですか?
提携農園から直接引いていること、洗浄から熟成まで自分たちでやっていること、実店舗を持たず、広告も出していないことの三つです。加えて、少量を高く売るより、量を使う方に長く続けていただくことを考えて値付けしています。