栽培伽羅

結香 — 栽培沈香は、どうやって香りを持つのか

結香(けっこう)とは、傷を受けた沈香樹が木部に樹脂を沈着させることで、栽培ではその傷を人の手で与えます。沈香樹は健康なままでは香りません。傷を受けた木は、防御反応として樹脂を分泌します。それが時間をかけて木部に溜まったものが沈香です。栽培伽羅の産地でいま主流なのは、実生の白木香に香りの良い系統の母樹から接ぎ木し、定植からおよそ4年、幹が十分に太った頃合いを見て穴を開ける「打眼(だがん)」という方法です。

目次

植えても、香らない

野生では偶然に、栽培では人の手で。ここから始めないと話が通じません。

沈香樹(ジンチョウゲ科アクイラリア属)を植えて、水をやって、健康に育てる。それを何年続けても沈香は採れません。傷のない木の木部は白くて軽く、削っても香りはほとんどしません。この状態の材を、産地の言葉では白木(しらき)と呼びます。白木香(はくもっこう)は材の呼び名ではなく、台木に使う沈香樹の樹種名です。

沈香のもとになるのは、木が傷ついたときに出る樹脂です。折れた、虫に食われた、菌に感染した——そういう異常が起きると、傷口を塞ごうとして分泌する。それが年月をかけて木部に沈着したものを、人間が採って焚いています。

つまり沈香は、木にとっては怪我の跡です。

野生の沈香が希少なのは、この条件が偶然そろう確率が低いからです。栽培では、傷を偶然に任せず、人の手でつけて結香させます。

産地で実際に行われている手順

栽培伽羅の主産地は中国(海南島・広東)です。ベトナムでも伽羅系統の栽培が試験的に行われています。

ここは一般論ではなく、当店が仕入れている先の話として書きます。中国・海南島の提携農園も、広東の提携先も、方法は同じです。

1. 実生の白木香を育てる

まず、台木になる木を種から育てます。種から育てた木を実生(みしょう)といいます。この段階ではただの白木香で、香りはありません。

2. 母樹から接ぎ木する

ここが要点です。香りの良い系統の母樹から穂木を取って、台木に接ぎます。

母樹(ぼじゅ)は、野外で生き残っていた野生の伽羅の原木を農園に移植したもので、接ぎ木の穂木を取る親木です。母樹の出自は接ぎ木の系統を示すもので、採れる材の香りが野生の伽羅と同じであることを意味するものではありません。

「栽培伽羅」という言い方が成り立つのは、この工程があるからです。品種としての性質は、接がれた穂木のほうから来ています。実生の木にただ穴を開けても、伽羅系統の香りにはなりません。

母樹の品種については別に書きました。栽培伽羅の品種 — 香りは品種が、値段は樹脂が決める

3. 幹が育つのを待つ

接いでからすぐには結香させません。幹が太り、接いだ部分が安定するのを待つ工程です。当店の提携農園では、栽培伽羅の苗を定植しておよそ4年、幹が十分に太った頃合いを見てから穴を開け、結香させはじめます。そこからさらに2〜3年、長いものでは4年ほど置き、樹脂の乗り具合を一本ずつ確かめたうえで伐り出す、というのが農園のやり方です。

4. 打眼(幹に穴を開ける)

幹に穴を開けて結香させる方法の総称で、産地の言葉で打眼(だがん)といいます。穴の開け方には、釘を打ち込むやり方(打釘)と、ドリルで穴を開けるやり方(産地でいう冷鑽)の二通りがあります。開けた孔の周囲から木が樹脂を出し、それが年月をかけて沈着していきます。

孔の数を増やせば結香する箇所は増えます。ただし孔の数を増やすほど一つあたりの樹脂の乗りは薄くなるとも言われ、数と質は必ずしも一致しません。釘は冷たいまま打つ場合と、焼いてから打つ場合があります。研究では約600℃に熱した鉄釘を打ち込む方法(火烙法。のちに触れる、樹皮を剝いで表面を焼く火焼法とは別の方法です)が報告されています。成分分析では、火烙法の材は薬液注入法(通体結香)の材より2-(2-フェニルエチル)クロモン類の相対含量が低いと報告されています(Hou ら 2024)。ただし、この指標は野生品でさらに低く、香りの良し悪しをそのまま表すものではありません。結香が早く、多いとされる奇楠(きなん)系統では、冷たいドリルでの穿孔が用いられます。焼き釘は材に焼けた痕が残り、香りは平凡になりやすいと産地では言われます。当店の提携農園はドリルで穿孔しており、釘は使いません。焼き釘の材も扱っていません。

孔の痕が残るのは、伐り出した原木の段階までです。 原木には規則正しく並んだ孔の痕がありますが、そこから結香した部分を切り分け、選別を経た小片や塊材には、孔の痕はほとんど残りません。手元の材に孔の痕が見えないからといって、打眼の材でないことにはなりません。

文献の写真。薬剤と菌で結香させた栽培沈香の材で、黒い樹脂の筋が木部に走っている
結香した栽培沈香の材の例。白い木部に、防御反応で分泌された樹脂が黒い筋として沈着しています。ただし、この文献の材は幹に径0.5cm・深さ4〜5cmの穴を開け、その孔に薬剤(1%ギ酸)と菌の培養液を注入する誘導法で結香させたもので、当店の提携農園が行うドリルによる打眼とは手順が異なります。写真:Chen et al. 2025, PLOS ONE 20(7): e0327516 (CC BY 4.0) の Fig 1 より切り出し
実生の白木香に接ぎ木し、定植から約4年で打眼。品種は接ぎ木の段階で決まります。孔の周りに沈着した樹脂を、時間を置いてから採取します。

開けた孔の内部には、木屑や土が残ります。これを洗わずにそのまま切ると、当店で試した限りでは、焚いたときに香木本来のものではない匂いが混じります。当店が超音波洗浄から工程を始めているのは、そのためです。

洗って、選り分けて、一年寝かせる — 当店が香木を売るまでにしていること

打眼のあと — 産地の公的基準に見る標準的な流れ

穴を開けたあとに何をするかは、産地の公的基準に書かれています。奇楠系統(産地で「結香が早く、多い」とされる接ぎ木系統)を扱う広東省茂名市の基準では、定植3年以上・接ぎ木部の太さ6cm以上の木を選びます。穿孔の12か月前から水やりと施肥を止め、乾季(早春または秋冬)に、充電式ドリルと細い錐(幹の太さに応じて4・6・8mm)で、焼かずに冷たいまま穿孔します。穴は幹径の8〜9割の深さまで、貫通させず、10〜15cm間隔で、奥に向かって水平よりやや上向き(5〜8°)に開けます(DB4409/T 69-2024)。広東省の基準は同じ向きを「外側の孔口をやや下向きにして水溜まりを防ぐ」と表現しています(DB44/T 2727-2025)。

物理的な穿孔では、孔は塞がず、何も詰めません。 当店が原文を確認した四つの現行基準(海南省・広東省・茂名市の地方基準と、国家林業和草原局の業界基準 LY/T 3374-2024)のいずれにも、物理的な穿孔について封口や充填の条項はなく、封口が規定されているのは菌剤や薬液を入れる方法だけでした。研究のプロトコルには、穿孔後に封止する例もあります。穿孔後は、孔の周りから出る芽を摘み、穿孔から約24か月後に幹ごと伐って材にします。水やりと施肥は穿孔の12か月前に止めたまま、採取まで再開しません。当店の提携農園も、冷たいドリルで穿孔し、孔は塞がず、何も詰めない点で、これと同じです。「定植から約4年で穿孔」は、基準の「定植3年以上」の条件を満たしています。ただし採取までの年数は、茂名市基準が穿孔後約24か月、広東省基準が2〜3年としているのに対し、当店の提携農園は穿孔後2〜3年で、長いものは4年と、基準より長く置くこともあります。

他の方法と、当店の立場

産地では他の方法も使われています。それぞれについて、当店がどう考えているかも書いておきます。

刀で傷をつける(砍傷法)

砍傷法(かんしょうほう)は、もっとも古い方法です。幹に刃物で傷を入れ、あとは自然の感染に任せます。中国の大学博物館の解説には、樹齢8〜10年・幹の直径30cmほどの木を選び、地上1.5〜2mの高さに、木目に沿って深さ3〜4cmほどの傷を数か所入れる、という数字が出てきます(北京中医薬大学中医薬博物館「沉香的人工结香」)。なお同じ解説にある「30〜40cm間隔」という数字は、砍傷法ではなく、幹を途中まで鋸で挽く半断干法(産地でいう開香門)のものです。

傷を負ったまま年月が経つほど、樹脂の沈着は増えていきます。ただし白木香は傷を塞ごうとする再生力も強く、系統によって差が出ます。木の条件が厳しく、収量が読めないのが難点です。考え方としては打眼と同じ、物理的な結香です。

火で焼く(火焼法)

樹皮を剝いだうえで、火炎放射器などで幹の表面を焼きます。同じ大学博物館の解説では、樹皮を剝いで乾かしたのち、幹の下から高さの50〜60%までを焼き、6〜12か月後に傷口の周囲が結香するとされます(北京中医薬大学中医薬博物館「沉香的人工结香」)。同じ解説は、対象を樹齢10年以上または直径20cm以上の白木香としています(砍傷法の8〜10年生・直径30cmとは条件が異なり、方法ごとに数字が違います)。表面に焼けた痕が残ります。当店の提携先はこの方法を使っておらず、火焼法の材は扱っていません。

菌を接種する(接菌法)— 当店は勧めていません

幹に穴を穿ち、培養した菌を詰めてフィルムで封じます。結香までの時間の見通しが立つのが利点です。産地では18か月ほどで塊状の沈香ができるとも言われますが、この数字は当店が確認した範囲では公的な基準にも大学の解説にも見当たらず、出所をたどれませんでした。木の条件も資料により樹齢3年以上・直径8cm以上などとされ、一定しません。

当店は、この方法で作られた材を扱っていません。

理由は単純で、木自身の反応で樹脂を出させる物理的な方法のほうが、香りが素直に出ると考えているからです。当店で試した限りでは、菌を入れて短期間で結香させた材は、量は出ても香りが平板に感じられることが多くありました。

もう一つ、実際的な理由があります。香木は、手で直接触れるものです。選別でも、小分けでも、焚くときも、人の手が材に触れます。菌剤や薬剤を使って結香させた材について、何がどれだけ残っているのか、触れ続けて問題がないのか——当店には確かめる手立てがありません。確かめられないものは勧めない。それだけのことです。

ただし、これは当店の基準の話です。接菌法が偽物だという意味ではありませんし、接菌法の材を扱う店を否定するつもりもありません。どちらの考えを取るかを、買う側が選べるようにしておきたいだけです。

針で注入する(注射法)

注射器や輸液器で培養液を注入します。手軽で収量も出ます。針穴が残ります。当店は香りの評価が焚き手によって分かれる方法だと考えており、扱っていません。

通体結香法 — 技術は実在します。普及の程度は、開発した側の発表による数字です

幹に薬液を注入し、木が水を吸い上げる力で全体に行き渡らせて樹脂を沈着させる方法です。中国医学科学院薬用植物研究所の研究チームが開発した方法(Agar-Wit)で、処理から6か月で伐った木の収量が、既存の方法の4〜28倍だったと報告されています。20か月置いた材は野生品に近い品質になったとも書かれています(Liu ら 2013)。技術としては実在します。

普及の程度についても数字は出ています。ただし当店が確認できたものは、いずれもこの技術を開発した研究所の側が発表した数字で、第三者が数えたものではありません。独立した総説は、この技術の長所と短所を論じるだけで、普及の規模には触れていません(Tan ら 2019)。そして、それらの数字が指しているのは実生の普通の白木香です。開発した側の発表のなかでも、奇楠系統については「奇楠種質の冷鑽法」が別の技術として並べて挙げられています。当店が仕入れている奇楠系統では、冷たいドリルでの穿孔(打眼)が産地の標準で、産地の団体標準も打眼を前提に書かれています(T/GXAS 858-2024)。当店が産地で見てきた範囲でも、奇楠系統の畑で通体結香が使われているのを見たことはありません。

にもかかわらず、商品説明としては非常によく見かけます。新しくて響きが良く、検証されにくい。そういう言葉が売り文句として使われるのは、この業界に限った話ではないと思います。

「通体結香」と書いてあったら、根拠を聞いてみてください。 答えられる店なら問題ありません。

木の育ち方のほうが、方法より効いている

これは数字で示せる話ではないので、実感として書きます。

当店で焚いてきた限りでは、雑木に混じるような環境で育った木ほど、結んだ香りが良い。

日当たり、風、土、周りの植生。整然と植えそろえた農園の列より、雑木に混じって育ったような木のほうが、結香したときに香りが深くなると感じます。方法をそろえても、育った場所で差が出ます。

理屈は分かりません。ストレスの多い環境が樹脂の質に効いているのかもしれませんし、単に生育が遅い木のほうが年輪が詰まるという話なのかもしれません。ただ、繰り返し焚いていると、そうとしか思えない差が出ます。

雑木に混じって育つ栽培沈香(アクイラリア属)の林
栽培沈香の林の例。整然とした果樹園ではなく、雑木林に近い環境で育てられることも多くあります。なお、幹に付いている緑色の袋はこの文献の研究で使われた輸液誘導の器具で、当店の提携農園の方法(打眼)とは異なります。写真:Chen et al. 2025, PLOS ONE 20(7): e0327516 (CC BY 4.0) の Fig 1 より切り出し

ですから結香法の名前を聞くより、どういう場所で育った木かを聞いたほうが、実のある答えが返ってきます。

人の手が入っていない結香 — 虫漏と樹丁

栽培の話をしてきましたが、農園の中でも、人の手を加えずに結香した材(香木)ができることがあります。こうした材は、傷のでき方がそのまま名前になっています。日本語に呼び名がないので、産地の言葉のまま紹介します。

虫漏(ちゅうろう/チョンロウ)

虫が幹に孔を穿ち、その周囲に木が樹脂を出して結香した材です。孔の形がそのまま残るので、材は不定形で細かくなります。

樹丁(じゅてい/シューディン)

枝が折れた跡、断枝部の傷から結香した材です。枝の付け根という限られた場所にできます。「樹丁」は産地の呼び名です。

この二つのほかにも、蟻にかじられた傷から結香したものなど、自然の傷に由来する材はいくつもあります。傷のでき方はさまざまなので、一つずつは挙げません。傷のでき方の数だけ、呼び名がある——そう思っていただければ十分です。

どれも人が何もしていません。 木が自分で受けた傷に、自分で反応しただけです。こうした人の痕跡のない自然の結香は、産地でも香りの評価が総じて高く、当店で試した限りでも、打眼で結ばせた材より香りが深く、複雑に出ることが多いように感じます。

問題は量です。産出量が極端に少ない。 虫がいつどこに入るかは選べませんし、枝がいつ折れるかも選べません。狙って作れないものは、商品として安定しません。

当店の定番に虫漏や樹丁が入っていないのは、そういう事情です。まとまった量を継続して出せない以上、規格品としては置けません。手に入ったときには、農園の木が人の手を加えずに結香した材であることを明記して、特撰でご案内します。

結局、何を聞けばいいか

売り手に確認するなら、この三つだと思います。

どこで育った木か。どんな環境で育ったか。 「野生か、農園か」という二択ではありません。当店の提携農園の木は、野生ではなく人の手で育てた木です。そのうえで、できるだけ自然に近い育ちの場を整えています。売り手がその環境をどこまで具体的に語れるかを見てください。

どうやって結香させたか。 打眼か、接菌か、その他か。どこまで答えられるかが、その店が材の来歴をどれだけ開示できるかの目安になります。

結香させてから何年で採ったか。採ったあと、どれだけ寝かせたか。 当店で焚いてきた限りでは、結香法の名前より、この年数のほうが香りを左右します。結香の期間が短い材は樹脂の層が薄くなります(研究でも結香率は1年・2年・3年と上がっていきます)。当店の経験では、そうした材は最初の数分だけ香って、あとは木の匂いになります。ただし研究では、期間が長いほど香りの質まで良くなるとは限らないとも報告されています。

樹脂は、木のどこに沈着するのか

研究は、沈香樹の材にある二つの組織を、樹脂形成の構造的な基盤としています。一つは介在師部(かいざいしぶ。材内師部とも、interxylary phloem)で、木部の中に師部——養分の通り道——が島のように散らばる組織です。もう一つは木部放射組織です。健康な木では、この二つが生きた柔細胞を含む主な組織で、デンプン粒を蓄えています。傷害や菌の侵入を受けると、ここに樹脂が沈着します。樹脂を含んだ介在師部は沈香の鍵となる構造で、真贋の鑑別の根拠にもなります(Liu ら 2019)。

打眼で幹に穴を開けるのは、この組織に傷を届けるためです。孔の周りに樹脂が沈着するのは、そこにある介在師部と放射組織が反応しているからです。

正倉院の蘭奢待についても、宮内庁正倉院事務所が2024年度に行った科学調査で、介在師部にあたる組織が傷害を受け、香りの成分が合成されていたことが示されたと、2025年9月1日の報道で伝えられています(科学技術振興機構 Science Portal 2025)。千二百年前の野生の沈香と、いま農園で結香させている沈香は、同じ組織の同じ反応でできています。ただし同じなのは仕組みだけで、産地も年代も、結香にかけた年数も違い、樹種も同じとは限りません(蘭奢待の樹種は公式には同定されていません)。香りが同じだとも、近いとも言いません。蘭奢待については、別途詳しく書く予定です。

野生と同じにはなりません

最後に、これは書いておきます。

栽培品の品質は、年々上がってきていると言われます。産地側の評価でも、緑油系統の栽培品は見た目・香りともに水準を上げてきたとされます。ただし同じ産地側からは、結香期間の不足、人為的な介入の方法、菌種の違いを挙げて、栽培品はまだ野生品の水準には達していないとする見方も出ています。なお緑油という呼び名は産地の取引の場での言い方で、学術的に確立した分類ではありません。白油・緑油の呼び分けについては栽培伽羅の品種に書きました。当店の特撰では品種番号(1号・2号)でお出ししています。

当店もそう思っています。当店の材は、野生の伽羅の代わりではありません。別の香木です。手に取って、惜しまず焚ける範囲の値段で、日々の暮らしの中で焚くための材だと考えています。

そのうえで、同じ栽培品の中で当たり外れを減らすことはできます。育ちの良い木を選び、物理的な結香のものを取り、洗って、選り分けて、寝かせる。当店がやっているのはそこです。

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参考文献

よくあるご質問

沈香樹を植えれば沈香が採れますか?

採れません。健康な沈香樹の木部は白く、香りもほとんどありません。産地の言葉では、その状態の材を白木と呼びます。傷を受けてはじめて、木が防御反応として樹脂を出します。植えることと採ることのあいだに、結香という工程があります。

当店の香木はどの方法で結香させたものですか?

海南島の提携農園、広東の提携先とも「打眼」です。実生の白木香に香りの良い系統の母樹から接ぎ木し、定植から約4年で幹に穴を開けて結香させ、穿孔後2〜3年(長いもので4年)で採取しています。菌を接種する方法は使っていません。

接菌法はなぜ勧めないのですか?

当店の考えでは、木自身の反応で樹脂を出させる物理的な方法のほうが、香りが素直に出ます。当店で試した限りでは、菌を入れて短期間で結香させた材は、量は出ても香りが平板に感じられることが多くありました。また香木は手で直接触れるものなので、菌剤や薬剤を使った材は残留の有無を当店では確かめられない、という実際的な理由もあります。ただしこれは基準の決め方の問題で、接菌法が偽物だという意味ではありません。

「通体結香」と書いてある商品を見かけますが、実際に行われている方法ですか?

技術としては実在します。研究論文もあります。ただし普及の程度を示す数字は、当店が確認できた範囲ではいずれも開発した側が発表したもので、第三者が数えたものではありません。その数字が指しているのも実生の普通の白木香で、当店が産地で見てきた範囲では、奇楠系統の畑で使われているのを見たことがありません。

虫漏や樹丁とは何ですか?

人の手が入らずに結香したもので、傷のでき方がそのまま名前になっています。虫漏は虫が幹に穿った孔の周りに結香した材、樹丁は枝が折れた跡から結香した材です。ほかにも蟻の傷など自然の傷に由来する材はいくつもあります。どれも香りの評価は高いのですが、産出量が極端に少なく、狙って作れません。

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