当店について

洗って、選り分けて、一年寝かせる — 当店が香木を売るまでにしていること

栽培沈香は、農園から採ったままの状態では商品になりません。当店の材は、人の手で幹に穴を開けて結香させたもので、その孔の内部には木屑や土が残ります。伐りたての材は、水分も多く含んでいます。当店は超音波洗浄・切断・剔除(てきじょ)・二次洗浄・乾燥・選別(香りと沈水)を経たうえで、倉庫でおよそ一年寝かせてから出荷しています。

目次

採ったままでは売れない

栽培沈香は、植えた沈香樹に人の手で傷をつけ、樹脂の分泌を促して作ります。当店の材は、幹に穴を開ける打眼(だがん)で結香させたものだけです。この「人の手で穴を開ける」という部分に、野生材にはない問題がついてきます。

孔の中が汚れます。

幹に開けた孔の内部には木屑や土が入り込み、材にはドリルの孔の痕や虫の入った跡も残ります。外から見える面をいくら磨いても、孔の内側には手が届きません。ここを処理せずに焚くと、当店で試した限りでは、香木そのものではない匂いが混ざります。

もう一つ、伐りたての材は水を含んでいます。 樹木ですから当然です。この水分は保管しているあいだに少しずつ抜けていき、それにつれて重量が減ります。

この二つを片づけないまま売ることもできます。実際、そうやって流通しているものは少なくないと思います。当店はそうしないことにしました。

工程

1. 超音波洗浄
超音波洗浄機にかけ、孔の内部と表面の付着物を落とします。樹脂は木部に沈着していて水にほとんど溶けないため、この工程で香りが落ちることはほぼありません。
2. 切断
洗浄後に切り分けます。ここではじめて、断面から樹脂の入り方が見えます。
3. 剔除(てきじょ)
断面を見ながら、樹脂の乗っていない白木の部分、腐りの入った部分を落とします。ここでかなりの量が減ります。
4. 二次洗浄
切断で新しく出た面を洗い、切削で出た粉を落とすため、もう一度超音波にかけます。
5. 乾燥
洗浄で含んだ水を抜きます。急がず、自然に。
6. 選別(香りと沈水)
乾いた材を焚いて香りを確かめ、香りの通った材だけを残します。定番は次に水に入れ、沈むかどうかで二分し、沈んだ材どうし・沈まなかった材どうしを当店の配合で合わせて香りをそろえます。沈んだ組が沈水選別品、沈まなかった組が通常品になります。
7. 熟成(約一年)
倉庫で寝かせます。材が含んでいた余分な水分が抜け、重量が動かなくなるのを待ちます。
8. 計量・包装
重量が安定してから電子はかりで量り、包装します。ここではじめて商品になります。
写真:超音波洗浄の前と後(準備中)
超音波洗浄の前と後。人の手で開けた孔の内部には木屑や土が残るため、超音波にかけてから切り分けます。

なぜ一年待つのか

いちばんの理由は重量です。

香木は重さで売買します。伐りたての材を量って売れば、お客様の手元に届いてから水分が抜け、重量が減っていきます。買ったときは100gだったものが、半年後に量ると100gを下回っている。水分が抜けたぶん、軽くなっているからです。当店は、これを誠実な売り方だとは考えていません。

寝かせて、余分な水分が抜けて、重量が動かなくなってから量る。出荷時には、重量が安定した材を量って包装しています。定番は規格の量目売りで、細かな欠けや粉になる分を見込んで、表示の量目より少し多めに入れています。実測値をそのまま記載するのは、一点物の特撰です。なお、保管環境(湿度)により、重量はわずかに変動することがあります。

図:一年での重量変化(模式図。実測値ではありません)。伐りたての材は水分を含んでいて重く、時間とともに軽くなっていきます。当店では約12か月かけて重量が安定してから量って出荷しています。

二つめの理由は香りです。当店で試した限り、乾燥の過程で角の立った匂いが落ち着きます。急いで出したものと、一年置いたものでは、立ち上がり方が違います。

この工程が価格に入っています

洗浄の設備、乾燥と選別の手間、そして何より一年分の倉庫代と、資金を寝かせること——これらは全部コストです。採ってすぐ売れば、この分は不要になります。

当店の価格には、これが入っています。逆に言えば、極端に価格の低い栽培沈香を見かけたら、採ったあとの工程が明かされているかどうかを確かめてみてください。

工程の写真

工程の写真は現在準備中です。撮影ができ次第、各工程の実際の様子をここに掲載します。
写真:剔除で落とす部分と、残す部分(準備中)
剔除の工程。断面を見ながら、樹脂の乗っていない部分と腐りの入った部分を落とします。ここでかなりの量が減ります。

農園を出たあとのこと

栽培沈香の品質は、農園だけで決まるものではありません。採ったあとに何をしたかで、手元に届くものは変わります。

当店は工程を公開します。比べていただくためです。

参考文献

  • Forest Products Laboratory. Air Drying of Lumber, FPL-GTR-117(繊維飽和点約30%、平衡含水率、乾燥に伴う重量減). https://doi.org/10.2737/fpl-gtr-117
  • Li et al., 2024. Anatomical, chemical and endophytic fungal diversity of a Qi-Nan clone of Aquilaria sinensis (Lour.) Spreng with different induction times(樹脂は木部放射組織・介在師部に充填). Frontiers in Plant Science 15: 1320226. https://doi.org/10.3389/fpls.2024.1320226
  • 张林凡ほか, 2023.「不同陈化年份沉香中微生物及挥发性成分的变化」『中国实验方剂学杂志』29(21): 155–164. https://doi.org/10.13422/j.cnki.syfjx.20231113
  • Tan et al., 2019. Agarwood Induction: Current Developments and Future Perspectives. Frontiers in Plant Science 10: 122. https://doi.org/10.3389/fpls.2019.00122

よくあるご質問

なぜ一年も寝かせるのですか?

重量が安定してから量って売るためです。伐りたての材は水分を含んでいて、その水分は時間とともに蒸発し、重量が減っていきます。寝かせずに売ると、お客様の手元で目減りしていくことになります。また、当店で試した限り、寝かせるあいだに香りも落ち着きます。

洗浄していない香木は何が問題ですか?

当店の材は幹に穴を開けて結香させたものなので、入荷したばかりの切り分ける前の材にはドリルで開けた孔の痕があり、孔の内部に木屑や土が残っていることがあります。洗わないまま焚くと、当店で試した限りでは、香木本来のものではない匂いが混ざります。

超音波洗浄で樹脂は落ちませんか?

樹脂は木部に沈着していて、水にはほとんど溶けません。落ちるのは主に表面と孔内の付着物です。

他店もこの工程をしていますか?

分かりません。ただ、工程を明かしている店はほとんど見かけません。当店は公開することにしました。

読みものの一覧へ

定番の香木を見る