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香木(沈香・伽羅)の保存方法 — 樹脂の多い材と少ない材で変える

香木は密閉容器に入れ、直射日光と蛍光灯の当たらない引き出しや戸棚に置くのが基本です。目安は湿度50〜60%。温度は人が快適に過ごせる室温で構いませんが、急な上下は避けてください。そのうえで、樹脂の多い材は光と空気、樹脂の少ない材は湿気、粉末は湿気と香り抜け、大きな塊材は乾燥しすぎに気をつけます。高温多湿ではカビと虫害のリスクが上がり、乾燥しすぎると割れが出ます。

目次

実際に効く保存方法

香木の敵は、湿気・光・空気の三つです。順に書きます。

湿気。 高温多湿の場所ではカビが生えやすく、虫もつきやすくなります。日本の夏は条件がそろいやすいので、風呂場の近く、キッチンの棚、閉め切った物置あたりは避けてください。

光。 直射日光はもちろん、蛍光灯のように紫外線をわずかに含む照明でも、長く当て続ければ樹脂の油分の劣化が進むと考えられます(精油の安定性についての総説からの類推で、香木そのものを調べた研究ではありません。Turek & Stintzing 2013)。飾っておきたい気持ちは分かりますが、香木にとっては良くありません。引き出しの中がいちばんです。

空気。 空気に触れ続けていると揮発成分が減っていきます。香りは少しずつ抜けます。密閉容器に入れる理由はこれです。

数字で言うと、湿度50〜60%が目安とされています。温度を一定に保つ必要はなく、急な上下を避けるだけで十分です。要するに、人が快適に過ごせる部屋なら香木も大丈夫、ということです。

置き場所は、お子さまやペットの手の届かない所を選んでください。小片や粉末は、誤って口に入れてしまうおそれがあります。

樹脂の多い材と、少ない材で変える

基本は同じですが、材によって気をつける相手が少し違います。当店で試した限りでの、材ごとの傾向です。

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材 気をつける相手 理由
樹脂の多い材(沈水選別品、特撰品) 光と空気 香りの主体である樹脂の油分は、光と空気に長く当たると劣化が進むと考えられます(精油の総説からの類推です)。湿気には比較的強く、割れにくいというのが当店で試した限りの印象です
樹脂の少ない材(通常品) 湿気 沈水しない材は樹脂の詰まりが緩く、そのぶん木部が湿気を吸いやすい、というのが当店で試した限りの印象です。高温多湿ではカビと虫の条件がそろいます
粉末 湿気と香り抜け 一般に表面積が大きく、塊より香りが抜けやすく、湿気も吸いやすい形とされます
大きな塊材(等級を問わず) 乾燥しすぎ 乾きすぎると木部が縮んで割れが出ます。塊が大きいほど起きやすくなります

樹脂の多い材は、密閉して暗所に置けば、それ以上のことは要りません。乾燥剤も基本は要りません。大きな塊材は、むしろ入れすぎに気をつけてください(下の「乾燥剤を入れすぎる」を参照)。

樹脂の少ない材は、湿気を吸いやすいので、夏場はとくに置き場所を選びます。袋を二重にし、風呂場やキッチンから離れた引き出しに置いてください。

粉末は、使う分だけ小さな密閉容器に移し、残りは空気を抜いて密閉します。開け閉めの回数を減らすのがいちばん効きます。

あまり意味のない気遣い

冷蔵庫。 勧めません。出し入れのたびに結露して、かえって湿気らせます。低温そのものは香りの劣化を遅らせると考えられますが、家庭の冷蔵庫ではその結露のほうが害になります。

高い容器を買う。 桐箱は湿度の変化をやわらげると言われますが、桐そのものの調湿性能を数値で示した研究は、当店が調べた範囲では見当たりません(正倉院で実測されてきたのは杉製の唐櫃です。髙畑 2022)。そして桐箱は密閉容器ではありません。効果を出したいなら、チャック付きの袋に入れてから箱に納めてください。袋を二重にすれば十分に機能します。

写真:袋を二重にして箱に納めるまで(準備中)
袋を二重にしてから箱に納めます。桐箱は湿度の変化をやわらげるとされますが、それだけでは密閉になりません。

乾燥剤を入れすぎる。 乾きすぎると今度は割れます。とくに塊材で起きます。乾燥剤を入れるなら小袋一つで十分です。

写真:乾燥しすぎて割れた塊材(準備中)
乾かしすぎると塊材に割れが出ます。乾燥剤は入れるなら一つで十分です。

当店の材について

当店の香木は、倉庫でおよそ一年寝かせてから出荷しています。含んでいた余分な水分が抜けて周りの湿度となじみ、重量が動かなくなってから量るためです。

ですから届いた時点で追加の乾燥は必要ありません。すでに周りの湿度となじんでいるので、常温の室内なら、重量はほとんど動きません(湿度によりごくわずかに増減することはあります)。買ったあとに目減りしないようにするための一年です。

加工工程の記事に、この一年で何をしているかを書きました。

それでも、置いておくより使ったほうがいい

保存の記事でこう書くのも変ですが、これが正直なところです。

香木は、焚いてはじめて香ります。密閉していても、出し入れのたびに空気に触れ、香りは少しずつ抜けていきます。五年後に開けたときの香りが、今日焚いたときと同じである保証はありません。

「良いものだから、いつか特別なときに」と取っておいて、結局そのまま何年も、というのはよくある話です。もったいないのは値段のほうではなくて、その材がいちばん良かった時期を逃すことだと思います。

当店が100g・500gと量が増えるほどグラム単価を下げているのは、そういう考えからです。少量を大事に取っておくより、日常的に、惜しまず焚く。そのほうが香木は生きます。

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参考文献

よくあるご質問

香木の保存方法は?

チャック付きの袋などの密閉容器に入れ、直射日光と蛍光灯の当たらない引き出しや戸棚に置きます。湿度の目安は50〜60%、温度は室温で、急な上下を避けます。そのうえで、樹脂の多い材は光と空気、樹脂の少ない材は湿気、粉末は湿気と香り抜け、大きな塊材は乾燥しすぎに気をつけてください。

粉末の保存方法は?

粉末は一般に表面積が大きく、塊より香りが抜けやすく、湿気も吸いやすい形とされます。使う分だけ小さな密閉容器に移し、残りは空気を抜いた袋で密閉して暗所に置いてください。開け閉めの回数を減らすことがいちばん効きます。

冷蔵庫に入れてもいいですか?

勧めません。出し入れのたびに結露します。低温そのものが悪いのではなく、家庭の冷蔵庫では低温の利点より、結露と急な温度変化の害が上回るためです。室内の引き出しや戸棚で十分です。

どんな容器がいいですか?

密閉できれば材質は問いません。チャック付きの袋を二重にするだけでも効果があります。桐箱は湿度の変化をやわらげると言われますが、桐そのものの調湿性能を数値で示した研究は当店が調べた範囲では見当たらず、それ自体は密閉容器でもないので、袋に入れてから箱に納めるのが確実です。

何年くらい持ちますか?

香木は腐りにくく、適切に保管すれば長く持ちます。ただし出し入れのたびに空気に触れ、香りは少しずつ抜けていきます。買ったまま何年も置いておくより、焚きながら減らしていくほうが結局いい状態で使えます。

当店の香木は乾燥させる必要がありますか?

ありません。倉庫でおよそ一年寝かせ、重量が動かなくなってから計量しています。届いた時点で、余分な水分は抜けて周りの湿度となじんでいます。あとは湿気らせないようにしていただければ大丈夫です。

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