香木の基礎

焼香に使う香木 — 抹香・焼香・沈香の関係を整理する

日本の仏事で使う「焼香」は、白檀や沈香に桂皮・大茴香などを配合した粉末を指すのが一般的です。樒(しきみ)の葉や皮を粉にしたものは「抹香」と呼び分けます。沈香そのものは、これらを調合するための香原料のひとつであり、単体で焚くこともできます。

三つの言葉が混ざっている

お寺や香舗の方とお話ししていると、この三つがよく混ざります。

抹香(まっこう)焼香(しょうこう)沈香(じんこう)

日常の会話では全部「お焼香」で済んでしまうので、混ざっても普通は困りません。ただ材料を仕入れる段になると、区別しないと話が通じません。整理しておきます。

抹香

樒(しきみ)の葉や皮を乾燥させて、細かい粉にしたものです。

樒はシキミ科の常緑樹で、香木ではありません。日本の仏事に古くから使われてきた植物です。焼香台の香合に入っていて、指で摘んで香炉の炭の上に落とす、あの粉が抹香です。

安価で、量が使えて、煙が穏やか。大人数の法要を考えると、理にかなった材料です。

焼香(商品としての)

こちらは配合品です。

白檀や沈香といった香木を主体に、桂皮(シナモン)、大茴香(八角)、丁子(クローブ)など複数の香原料を混ぜて粉末にしたもの。仏具店で「三種香」「五種香」の名で売られているのがこれです。

配合の比率は店ごとに違い、そこが個性になっています。沈香を多く使ったものは高価になります。

沈香そのものを買っても「焼香」にはならない、というのがここでの要点です。焼香は調合された製品で、沈香はその原料のひとつです。

沈香(香木としての)

ジンチョウゲ科の樹木に樹脂が沈着した木部。当店が扱っているのはこれです。

香木を扱う世界では、用途によって形が呼び分けられています。

主な用途
分割(角割)・細割 聞香。香道で銀葉に載せる
刻み 焼香、匂い袋の中身
粉末 練香・線香・匂い香の原料
塊材 自分で削って使う。原料としての在庫

当店の定番は小片・塊材・粉末の三形です。小片は市場でいう刻みに近い大きさですが、香道の調合用の呼び名と紛れないよう、当店では小片と呼んでいます。聞香用の分割は扱っていません。当店の材は栽培品で、香道の六国分類に載せる性格のものではないからです。

沈香をそのまま焚く場合

配合せず、沈香だけを焚くこともできます。というより、当店がふだん勧めているのはそちらです。

香炉の灰か、炭の上に、小片をひとつまみ。それだけです。配合品より香りは単一になりますが、その材が持っているものがそのまま出ます。

電子香炉を使う場合は80〜120℃。150℃を超えると焦げた匂いが混じりやすくなります。詳しくは栽培伽羅の焚き方に書きました。

なお、香道でいう空薫(そらだき)や、銀葉を使った聞香は、当店の材ではあまり勧めていません。理由は上と同じで、作法が野生の香木を前提に組み立てられているためです。

作法については、お寺に聞いてください

焼香の回数や所作は宗派によって違います。一回の宗派もあれば三回の宗派もあり、額に押し戴くかどうかも分かれます。

そこは当店の領分ではありません。菩提寺にお尋ねください。当店がお答えできるのは、何を焚くか、という材料の話までです。

原料としての仕入れについて

配合用の原料をお探しの寺院・香舗・製造販売の方には、小片と粉末を1kg以上・kg単位でお見積りしています。500gまでの量目は、オンラインストアの通常価格でお求めいただけます。

当店の材はすべて栽培沈香です。野生の沈香ではありません。そのぶん価格は抑えられていて、通常品100gで298円/g、粉末なら228円/g。配合の主体として使うには現実的な水準だと思います。

粉末は通常品のみの扱いです。塊材を切り分けるときに出た同じ材の粉で、どこかから集めてきた寄せ集めではありません。母材がはっきりしています。

条件と見積りの流れは大口・業務用のご相談にまとめました。まずお試しセットで等級と形を確かめていただいてからのほうが、話が早いと思います。

よくあるご質問

焼香と抹香は違うものですか?

一般的には区別します。抹香は樒(しきみ)の葉や皮を乾燥させて粉にしたもの。焼香は白檀・沈香などの香木に桂皮や大茴香といった香原料を配合した粉末を指します。ただし現場では両方をまとめて「お焼香」と呼ぶことも多く、厳密に使い分けられているわけではありません。

沈香をそのまま焼香として使えますか?

使えます。香炉の炭または灰の上に、ひとつまみ載せるだけです。配合された焼香より香りは単一になりますが、材の性格がそのまま出ます。当店の小片や粉末をこの用途でお使いの方もいらっしゃいます。

配合用の原料として沈香を仕入れられますか?

承っています。小片・粉末とも、1kg以上・定期購入でご相談いただけます。500gまでの量目はオンラインストア(STORES)の通常価格です。等級は通常品と沈水選別品の二つ、粉末は通常品のみのご用意です。

焼香の作法は宗派で違いますか?

違います。回数や所作は宗派ごとに定まっているので、そちらは菩提寺にお尋ねください。当店がお答えできるのは材料の話までです。

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