天香屋の考え
天香屋の考え
当店は、人の手で育てた香木「栽培伽羅」を、栽培品として売る店です。
野生の伽羅の代わりではなく、栽培は栽培として。「栽培伽羅」という名のまま、伽羅らしい香りを次へつないでいける。当店はそう信じて、この仕事をしています。
はじまりは、静けさ
香木の仕事に関わって、十数年になります。最初に惹かれたのは、香木をひとかけら焚いたあと、部屋に残る静かな時間でした。茶の湯でいう「和敬清寂」に通じるものだと思っています。それがこの仕事の出発点であり、当店がいちばん大事にしているものです。
この香木を、育つところから見てきました
栽培伽羅が形になるまでの年月を、当店はそばで見てきました。木に香りを結ばせ、それが育つのを待つ。それは自然に逆らうことではなく、香木とのもうひとつの付き合い方だと考えています。ですから「栽培」の二字を隠しませんし、野生の伽羅と混ぜて語ることもしません。栽培伽羅は独立したひとつのカテゴリーであり、野生の伽羅の名を借りるのではなく、栽培伽羅の基準で評価されるべきものです。
惜しまずに、焚けること
野生の伽羅は、香道で、ごく小さな一片を聞いて味わうものです。炭の上で惜しみなく焚くには、あまりに貴重です。栽培伽羅なら、それができます。香炉に一片を置いて、部屋いっぱいに香らせる。日々の暮らしの中で、法事の席で、伽羅らしい香りを惜しまずに焚く。当店が栽培伽羅に見ている値打ちは、まずそこにあります。
正直に申し上げます
いまの栽培伽羅と野生の伽羅とでは、香りにはっきりとした隔たりがあります。隔たりは、品種、育てた年数、管理と栽培の行き届き方によるもので、「栽培」であること自体から来るのではない、と当店は考えています。いまお出ししている品は、この隔たりがある前提でお選びください。定番品は当店の等級で、特撰品は香りの印象を言葉で。どちらも、その香木がどういう木なのかを、そのまま書き添えてお送りします。
続けてこられた理由
香りの質を落とさないために、市場の求めとは異なる選び方を、重ねてきています。やめようかと思ったこともあります。支えになったのは、お客様の言葉でした。節目の日に焚いてくださった方。ご先祖さまにお供えする香りとして選んでくださった方。そうした言葉をいただいたとき、この仕事には価値があるのだと思えました。
当店の願い
当店が売っているのは、野生の伽羅の代わりではなく、別の香木です。安さを売りにする店でもありません。ただ、値段は、手に取って、惜しまず焚ける範囲に置いておきたいと思っています。この香りを、より多くの方に味わっていただくためです。お使いになったあとで、暮らしにささやかな良いものが増えたと感じていただけること。それが当店の願いです。
これから確かめたいこと
野生の伽羅は貴重で、使われるにつれて、年々少なくなっています。当店が続けたいのは、栽培伽羅を育て、この香りを次へ残していくことです。よりよい品種、より行き届いた管理と栽培、より長い育成の年月。その先で、栽培伽羅が野生の伽羅にどこまで近づけるのかを、時間をかけて確かめたいと思っています。焚く以外にも、香りに触れていただく形はあるはずです。香木が、すこしずつ暮らしの中に入っていけたらと思います。
(この文章は当店の考えを述べたもので、いまお出ししている香木の品質や効果を説明するものではありません。)
伽羅の香りを、栽培でつなぐ。